2018年3月25日日曜日

確かな光


今週は、ある会で仙台に行く機会が有り、それを利用して、沿岸地域にも足を延ばしていました。

人口比最大の被害を出したとも言われる女川町に行きましたが、その復興の様子に驚きました。
復興と言っても、まだまだ山を切り崩し、平地になった土地にトラックが行き交っており、この後、何年も工事がかかることがうかがえます。

ただそれは、今回と同じ高さの津波が来ても浸からない場所に住宅を作り、その下に商業施設、そして一番下の沿岸部には公園を作るというもので、山を切り崩した土で、沿岸部の高さを盛っている光景で、一目でこのエリアの住民の方々が結束されたのか、話し合いがうまく行っていることが分かりました。

七年とは言え、これだけのことが纏まって進んでいること、そしてそれも将来を考えての計画で、余程、住民の方々のコミュニティーがしっかりしていたのと、リーダーシップがしっかりし、皆さんが同じ将来像に向かわれているのだと感じました。

町の方に、“何故こんなに、計画立てて進めることができているのか?”と聞くと、震災直後から、町の復興には数十年もかかるだろうから、その将来の町に住む、二十代、三十代の人たちが中心に進め、五十代、六十代の人たちは、そのサポートに回ろうということが、年配者の方からあり、その様になったことと、殆どが流され、場所もなかったので、狭い場所に、商工会と漁業協同組合が入り、そこで町の決定において、密なコミュニケーションが取れたことが大きいと仰っていました。

女川町では防波堤は作らないと決められたそうですが、既に防波堤で囲まれた内側に家を建てている町もありました。

それぞれの町の事情、住民の方の考え、リーダーシップを含めた関係性などで、将来像を描けるのか、描く将来像も全く違うものになるのでしょうし、何が正解か?軽々しく言えるものではないと思います。

ただ、少なくとも女川町の、合意形成、リーダーシップの在り方、官民一体となった運営など、2040年には896もの市町村が消滅するとも言われる日本において、大きなヒントがあると思いますし、自治体に限らず企業においても、大変学ぶべきモデルだと感じました。

私も、二十代、三十代が中心となって、将来のウエダ本社を構想し、ベテランがそれをサポートしていく様な組織を創っていきたいと思いますし、実はそんなことに向けての、ネタ作り、地ならし的なことで、何かに紐づけては、あちらこちらに出かけているのです。

とは言え、年度末の忙しい時期に、この様な時間を持てるのも、スタッフ達が日々の業務をこなしてくれているからですし、そのことに感謝すると共に、それに報いていく為にも、グランドデザインをしっかり描いていきたいと思います。

我々も、何の強みもなかったからこその弱者の論理で、大手や、所謂これまでの勝ち組とされている所では気づかないことをこれまで追いかけて来ましたが、課題先進国と言われながら、まだまだ平和ボケ、贅沢病が慢性疾患の様に進行しているこの国において、変えていけるのは、大きな痛みを経験した人や、弱者の論理で考えられる人ではないでしょうか?

先日行った福島もそうですが、大変ながらも、確かな光は見えています。




2018年3月18日日曜日

奪い合う大人と、分け合う大人

福島から帰りの3.11の日曜日、新幹線の停電というトラブルで、危うく帰れなくなりそうでしたが、何とか夜中には家に着き、今週も無事過ごすことができました。

災害や事故というものは、どうしても時間の経過と共に意識も薄らいでいきます。

辛いことや苦しいことも、それが薄れていかないと消化できないので、人間にとっては必要な作用なのだと思いますが、それだけに振り返ってみることは重要だと思いますし、今回、福島に訪問させて頂いて、改めて被害を受けず、通常の生活を送ることができている我々は、自分の使命、やれることを考えていかなくてはならないと思いました。

ただ一方で、被害を受けられた方からすれば、他の人から忘れ去られるのが最も辛いことですので、当初、放射能を吸着するという効果を期待して始められた“福島ひまわりプロジェクト”ですが、その効果が無いと分かって以降も、全国の方に、ひまわりを育ててもらって、その種を福島に送ってもらうことで、いつまでも忘れられない様にすること、絆を残し、広げていくことに目的を変え、福島ひまわり”里親“プロジェクトとして継続して来られたのです。

そんなこれまでの経緯がコミックにもなって発刊され、来年度福島県全ての小中学校に、道徳教材、風化対策の教材として配布されることになったそうですので、この普及や設置などでご協力頂ける方がおられましたら、是非ご連絡下さい。

今週は、毎回五回シリーズで行っている知恵の場の最終回があり、ゲストは、「お菓子のデパートよしや」創業者の、神吉相談役でした。

お菓子の卸という、業種的には決して粗利が取れて儲かるというものではない中、創業以来50数年間、一度の赤字もないという経営をされているので、どんな経営者も、反論の余地がありませんが、お話を聞けば、一切言い訳の余地がなくなります。

創業したときに、大手にも勝つためには、誰にでもできることで、しかし他ができないことをやろうと、三つのことをやることを決めた。
それは、①他より早く店を開ける ②年中無休 ③決済を早くする ということで、それを守って来たとのことや、社長が早起きをする会社は倒産しない、早起きする人は成績が良い、30人までの会社は
代表者が普通の1.5倍働かないと駄目、などなど、やろうと思えば誰でもできることを徹底継続され、それで結果が出ることを証明されているのですから、逃れようがありません。

しかしそれだけの厳しさと同時に、人を徹底的に大事にされていて、35番でビリの人を辞めさせても34番の人がビリになるだけで、そんなことをやっても無駄、マイナスの人も役割があり、会社にはプラスを与えているとのことでした。

私が最もやられたのは、”人に尽くした場合、その時点で忘れる”ということでした。

見返りは求めていないものの、どうしても、あの人は報告もして来ないとか、こちらがやったことを全部自分のものにしている、、などと思ってしまいますが、「その人がどうするかは、その人の勝手」という言葉に、撃ち抜かれました(笑)

又、「奪い合ったら足らなくなるんですよ、でもね、不思議と分け合うと余ってくるんですな。」
「この世からはあの世は見えないけれど、あの世からこの世は見えると思うんですよ。だから、良いことをやっていると守られるんです」
「どんな親でも、一番喜ぶのは、自分の子供が幸せになることです。だから一番の親孝行は、自分が幸せになることです」などなど、凡事徹底で成功を収めてこられた相談役が仰ると、全て正しく聞こえて、自分が情けなくなるのと同時に、温かい希望というのか勇気も沸いてくるのです。


ニュースでは、毎日、国政のTOPや、超エリート官僚が、責任のなすり付け合いや、責任逃れ、力づくでの隠蔽など、醜態をさらけ出しています。

こんな人達が、被災地の人の痛みを分かって、有効な手立てを打てる筈がありませんし、こんな大人達が、子供の教育を考えていても、素晴らしい大人にはならないでしょう。

自分の利益や、立場ばかり考えている大人、力づくでねじ伏せようとする姿は格好悪いものです。

「奪い合ったら足らなくなるんです。分け合うと余ってくるので、それを皆に分配するのです」

そんなことが言える格好いい大人を増やしていかなくてはならないと思います。

2018年3月11日日曜日

マインドセットを見直して


今、東京から福島のホテルに入っています。

明日311日に開催される、ひまわり甲子園全国大会に参加する為ですが、これについては、又、改めて書く事になると思いますので、今週は東京での話にしたいと思います。

と言っても、東京での話が内容有り過ぎで、うまく纏められないですが、大変良かったのは、自分のマインドセットを見直せたことと、又、新たな沢山の人間関係資本が増幅できたことです。

まずは38日の国際女性デーにHeForShe 「マインドセットは自分で決める」~あなたはどんな生き方・働き方を選びますか~と題して開催されたセミナーに、ユニリーバの島田さんにお招き頂いて参加しましたが、そこでは、19歳で七大陸最高峰を制覇された南谷真鈴さんを始め、登壇されていた方々が、“できない”側の言葉を使わないというより、ポジティブに考えられるマインドセットが身についていて、だからこその成果と、キラキラ感を感じました。
1200人の申し込みがあったという会場には、あちこちで活躍されている方がズラリで、それぞれの方とゆっくりお話ししたかったのですが、この日は夜に、ホームズビーの嘉村さんが解説をしてブレークしている「Teal」の出版記念イベントがあって、そちらにハシゴしました。

こちらも、早稲田大学の入山章栄さん、ビオトープの佐宗邦威さんというキャストで、嘉村さんの実例の説明を入山さんが質問しながら形に描いて頂く様な、それこそ、入山さんの著書ではないですが、ビジネススクールでも学べない様な贅沢なセッションでした。

Teal組織で印象的であったのは、中長期計画すら持っておらず、その時々に、自分達は何の為に存在するのか?を考え、その都度形を変えていくという事でした。

確かに、そこでも言われていた話ですが、自然界は予定通りにならないのに、企業は予定通りにしようとする矛盾があります。

不確定な中、全員が世の中のセンサーとして動く様な組織が“Teal”という事ですが、この日の二つのセッションで、私自身の言葉の発し方や、リーダーシップの取り方を反省し、改めて、一番下でサポートしていく様なアプローチにしていこうと思いました。

9日、10日は、東京ミッドタウンのデザインハブで開催されている「地域×デザイン2018」というイベント内で、“selfTURN×Work Design Awardという賞があり、受賞企業の紹介プレゼンと、表彰式に参加させて頂きました。

こちらでも受賞者や、selfTURNを提唱された主催者の日本人材機構の小城社長など、皆さん素晴らしい活動もさる事ながら、やはり言葉が力強く、こちらでもマインドセットの重要性を感じました。

そして今まで、表彰などの場面では、私自身“若手”であったのが、今回の受賞者の中では“最年長”の立場となっており、それだけに、いつの間にやら形作られてしまった自分のアンコンシャスバイアスに気づき、改めて“若手”に負けない様、マインドセットを自分自身に問いかけ決めていきたいと思います。

明日も早いので、今日はこの辺で。。


2018年3月4日日曜日

日本の病巣を取り除くこと

今週月曜日にはウエダ本社で、リヴオン代表の尾角光美さんが”日英の自死遺族支援の発展と課題〜社会政策の視点から”という講演とリヴオンの活動報告会を行なっていました。

日英の…というのも、代表の尾角さんが日本財団の国際フェローシップで英国留学しており、その報告という事もありながら、一方で、代表であり全ての収入源とも言える尾角さんが留学してしまって、どうなってしまうの?という不安の中、講演やワークショップを見事にこなして乗り切って頂いた水口さんから、支援者に向けてのご報告という会でした。

「乗り切って頂いた」と私が言うのも妙な表現ですが、私はこの財団の理事でもあり、又、そう言うと、ボランティア?社会貢献?という尺度でも思われると思いますが、そうではなく、年間3万人もの自殺者を出すという事は、経済的発展を遂げて来た日本の病巣であり、”働く”を考えていく我々にとっても、本質的に考えていくには”生きる”について考えていかなくてはなりません。
そして、”生きる”を考える為には、必ずある”死”というものも意識して、だからこそ、自分の人生をどう生きるのか?又、先祖から脈々と受け継がれて来た自分の命をどの様に捉え、その受け継いだ自分の時間をどの様に使っていくのか?から考えていかなくてはならないと思っています。

ましてや日本の自殺のもう一つの特徴である、中高年男性が多いという問題は、働き方、企業環境が大きく関わった話ですので、ウエダ本社としてもど真ん中の領域であり、これを本質的に改善していこうと思えば、企業を取り巻く社会環境、消費者(国民)意識から変えていかなくてはなりません。

そこには、哲学的思考や宗教心なども大きく関わる話で、そんな所から見直していかなくてはならないと思います。

今週は、発達障害や働きづらさを抱えた方の就職支援をされているエンカレッジさんの授業で、生徒さん達が職場見学に来られていましたが、そこでも我々の展開というよりは、まずは”働く”という事について、”仕事をやらなくてはならない“という感覚ではなく、少しでも自分の適正、やりたい事をイメージしてもらえる様に話させて頂きました。

三ヶ月に一度行なっている社員面談も今週で終わりましたが、今回の面談で一番嬉しかったのは、二年前に高校からの新卒で”二十歳“で入社した社員の圧倒的な成長でした。

その前からもあるにしろ、三ヶ月前の面談からの成長度合いに驚きましたが、高卒で二十歳という通り、彼は中学では荒れ、高校では約一年半引きこもっていました。

以前これはブログでも書きましたが、高卒採用で大きな問題だと思うのが、基本的に一回で決めないといけないという事と、これは大卒でも同じですが、今の時代、プライベートに関する事を何も聞いてはいけないという事です。

大事な人生が掛かってるのに、そんな馬鹿な!と言って、学校にも本人にも、私はトコトン聞くという事、可能な限り何度か来てもらうと言って、結果、彼が引きこもりを克服して二つ年下と一緒に卒業して来た事、じっくり話すと、恩返しという言葉が出てくる事に賭けて、採用枠を増やして採ったのですが、今回の面談で、彼が目的さえ決めれば、先輩達と比べてもしっかりやる事や、現場など、特に若い人がやりたがらない様な事を全く厭わず向かう事について、何故、そうできるのか?を聞くと、この二つ下の人達と混じって卒業を目指すと決めた時に、負けたくないという意識や、遅れていた事を取り戻したいという目標に対してやる事の癖づけができたのでは?との事でした。
又、彼は現場で年配の職人さんからも評判が良いので、その事も聞くと、現場というのは、所謂、3K的に、キツイ、厳しい所で、何も作れない我々は、その職人さん達にやってもらうしかないので、少しでも気持ち良くやってもらえる事を意識しているとの事でした。

一回の、殆どプライベートの事が聞けない面接では、うちの会社でも採用はできなかっただろう人物が、二年の間でこれだけ成長してくれているという事、そしてそんな成長ができるのも”働く”という事の素晴らしい所です。

一回の面接で、根掘り葉掘りも聞けない中で、どんな人かどうやって分かるのでしょう?

そしてそんな人を、表面だけ、成績だけで見ていて、業績だけ追いかけてやっていけば、おかしくなるのは当たり前だと思います。

いつも帰結は同じで恐縮ですが、今大変な問題だと思うので言い続けますが、働き方改革は時間だけの問題ではありません。

それらは働く事は悪い事の様なイメージを与えかねない、人も含めて、様々な事に対して、表面だけでしか判断できない、社会全体の問題であり、そんな病巣を取り除いていかなくてはならないと思います。