2017年4月29日土曜日

時代に合わせた経営能力

今週は長崎に行っておりました。

実は長崎は高校の修学旅行で行っただけで、30数年ぶりの二度目という事でしたので、軍艦島は初めて行きました。

その風景的なものには以前から興味はありましたが、日本最古の鉄筋アパート始め、かつては東京の9倍以上で世界一の人口密度であったものが、現在では廃墟となり、無人島となってしまったという、100年弱の間に栄枯盛衰を経験した世界でも例のない場所ですから、興味だらけの場所でした。


通称軍艦島と言われる端島炭坑は、正に現在の日本の豊かさを作ってきたと言っても過言ではないと思います。

日本に西洋の技術を持ち込んだグラバー商会が倒産し、隣の高島炭坑の経営を引き継いだ後藤象二郎も大赤字で苦しんだ中、福沢諭吉と大隈重信が岩崎彌太郎に提案し、弟の岩崎彌之助が彌太郎を説得してそれら炭坑を三菱が買取る事となったとの事で、フィクションドラマ?という様なキャスティングです。

その後、炭坑自体もそうですが、三菱、そして日本全体の発展に繋がっていくのですから、その礎とも言える場に立っていると思うと、ゾクゾクとしました。

決してそんな綺麗事ではなく、劣悪な環境の中、過酷な労働を強いられた多くの労働者の犠牲の上での繁栄なのだと思いますが、それでも紹介されていた写真などからは、登っていく、”生命力”の様なものを感じました。

それが、石炭から石油にエネルギーの主役が変わると、繁栄を極めた炭坑が閉山して、廃墟にまで至った光景も、スパンを変えて見れば、人類の栄枯盛衰とも感じられ、色々と考えさせられるのです。

火力から主役を奪った原子力発電は、未曾有の大惨事を起こし、エネルギーの勢力変化は、世界のパワーバランスを変え、その不安定さが一触即発の危機にも繋がっていますが、物資的な豊かさを求めて、一心不乱に働いて来た当時の人達からは、どの様に映るのでしょうか?

おりしも長崎に向かった4月25日は北朝鮮人民軍の創設記念日との事で、北朝鮮が何らかの行動を取るとの話も流れていましたが、北朝鮮やアメリカのリーダーにも、無人、廃墟となった軍艦島の姿から、欲望の先の愚かさを連想してもらいたいものです。

今回、ハウステンボスにも初めて行きました。

一転、テーマパークの話?って感じですが、こちらも経営面においては、長年赤字続きであった所をHISさんに代わってから、一挙に黒字転換されたのですが、ディズニーランドやUSJの様な華々しい事はできないながらの、ソフトでの仕掛けが見て取れました。

一触即発の世界情勢の中、経営者として自分事としてできる事として、もう資源を争いあって掘り尽くす経営ではなく、無い物から生み出し、アイデアを駆使して、与えられた状況でマネジメント能力を発揮した経営を目指していきたいと思います。

資金も資源も無いので、それしかできないのですが^^;




2017年4月23日日曜日

飛び石かどうか?

今週末は"海の京都" 丹後に行っておりました。

主はトップフォーラムで宮津と伊根町に行っていたのですが、翌日は京丹後市にも足を延ばして来ました。

トップフォーラムでは、飯尾醸造の5代目飯尾社長の講演がありましたが、3年前の京都流議定書以来に聴いたお話は、その話し方だけでなく、内容、展開も進化していて、やはり本物の展開、進化というものを感じました。

飯尾醸造さんについては、6年前に訪問した際のブログhttp://okamura-kyotostyle.blogspot.jp/2011/03/48-2.html  に書いてますので、そちらをご覧頂ければと思いますが、今回はそれらの話に加えて、飯尾さんがこの数年取り組んでこられた、宮津のサンセバスチャン構想についてお話されていました。

サンセバスチャンというのは、美食の町として世界中から観光客を呼び込むスペイン北部の町ですが、飯尾さんは宮津や丹後をそんな町にしていく事を目指して、旧花街の建物を買って、そこに鮨屋とイタリアンのお店をオープンされるそうです。


勉強会では、何故イタリアン?という突っ込みもありましたが、その後個別で聞いた話などからも、決して飛び石を打った展開ではなく、農家さんや地域、そして消費者に対してどうあるべきか?と、脈々と続く本物の理念からの発想である様に感じました。

そして驚いたのは、無農薬で作る農家さんを守る為に、通常より何倍もで買い取り、数百万もする機械は飯尾醸造さんが購入して無償で貸し出すなどして、農家さんの収入を上げる事まで行なって来られながら、法人化してから一度も赤字になった事がないと言われるどころか、最近では10%以上の利益まで残しておられるのですから、自分自身、自社の展開の中途半端さが恥ずかしくなりました。

夜の懇親会は、伊根町の舟屋群にオープンしたカフェを貸し切りで、地元の豊富な魚介、山菜類を堪能させて頂きました。

見事なロケーションとお洒落な建物ですが、伊根町の規模からすればかなり大きな投資だと思いますし、個人的には、ちょっと微妙な感じを受けました。

当たり前ですが、物事にはハードとソフトが必要で、そのバランス、それを生み出すマインドというのか、何を目指し、何を生み出すのか?、そしてそれは何から生まれて来たのか?というものが必要であると思いますし、それは中小企業、過疎地域など、弱い立場の側は、よりその視点が重要だと思います。

ソーシャルや地域という、今まで陽が当たらなかったり、弱い立場であった所に参入してくる所が増え、今まで集まらなかったお金や、できなかったハードが作られたりして、ハードから来たのか?背景などソフトから作られて来たのかが、一見、分かりにくくなって来ています。

それは、我々の展開するオフィス環境でも同じで、見栄えやハードは作れますが、何故その様に構成するのか?というソフトが分からないと、昔のハコモノと変わらないものになってしまいます。

まあ、企業、会社自体もそうかもしれませんが、そういう意味でも飯尾さんの展開は、私は決して飛び石ではないと思いますし、ハードとソフトの背景が分かりにくくなっていくからこそ、我々はそのソフト部分に拘り、その微妙な差が分かる人や所と一緒に行動していきたいと思います。


2017年4月15日土曜日

働き方変革とGDP

GDPの見直しが2017年に始まるとの事です。

戦後一貫して使用してきた統計手法では複雑な経済の流れを捉えきれなくなった、との説明も違和感というか、そりゃそうだろうと思いますが、今から14年間をかけて、欧米などの先進国に揃えていくという事に、これ又、日本って、何故そんな風になるのだろうかと思ってしまいます。

”統計もガラパゴスだった”との事で、手法を変えてGDPをUPさせていきたいのだと思いますが、2015年で4.2兆ドルと1990年代から横ばいの日本に対して、米国は約3倍の18兆ドル、中国は20倍の11兆ドルと大きく離されてしまった差は、抜本的に考え方、価値観を変えていかなければ、簡単には埋めていけないのではないでしょうか?

ここに来て急速に、我々の主戦場とするオフィスに対しての考え方も変わってきていますが、これらの事に無関係ではなく、生産性を高める事、その為にはオフィスを創造空間にしていかなくてはならないという思考が出てきています。

日本のオフィスの現状から、創造空間というとまだ理想という感じがしますが、せめて最も初期レベルの作業空間からは脱していかないとなりませんし、作業空間としての捉え方では、働き方変革など絵空事になると思います。

「ワークシフト」に続いて上梓された「ライフシフト」には、20世紀にオフィスで働く人が増えたのは、現代的な大企業が台頭したからと書かれていましたが、人口減少社会を迎えるから成り立たないのか、AI、IOTが発達する事も含めてライフスタイル全体が変わるから、働き方が自ずと変わっていくのか、いずれにしても、日本の大企業をベースにした働き方から頭を変えていかないと、統計の見直しでUPしたとしても、ガラパゴスから抜け出せない様に思います。

「ライフシフト」では同時に、今後の人口減少を迎える時代には、小回りの利く俊敏な小企業が重要で、中小の新興企業で、専門性の高い職や柔軟な働き方が生まれるとも書かれています。

だからこそ、国が唱える制度から入る大企業を中心した働き方変革では、大きく打開できないと思いますし、漸くオフィスに対する考えが変わり出した今、ウエダ本社では、いい会社を目指す中小企業から柔軟な働き方と、そんな働き方が成果を生んで行く風土や環境作りを推進していきたいと考えています。

そして、まだまだ悩み中ですが、10周年を迎える今年の京都流議定書は、そんなところを出していければと思っていますので、8月4日〜6日は是非お越し下さい!




2017年4月9日日曜日

改めて、不易と流行を考える

色々あった今週は入社式からスタートしました。

今年は内定者が最終卒業できず入社見送りという不測の事態もあり、結果的には台湾人女性一人の入社式となりました。

入社式では毎年、ご両親からの手紙や本人の写真などを送ってもらって映像を作るのですが、今年はこちらからの手紙と、送って頂いたお手紙の翻訳や、そのやり取りなどもあってヒヤヒヤしましたが、京都造形大の方々のご協力のお陰で無事間に合い、例年通りスタッフも、ご両親からのメッセージが入った映像に仕上げてくれていました。

働き方や、働く環境を変革させていくにおいても、又、新たな価値を生み出していくにおいても、組織内に、男性と女性という以外の様々な属性を入れていかなくてはならないと考えており、そういう意味でも留学生の採用も考えていたので、良いタイミングで、そして今回も又、私が信頼している先生からのご紹介というご縁で、素晴らしい新入社員が入ってくれたと思っています。

ビジネス面でも今週は、ある大手企業さんのショールームを、ウエダ本社でやる事を決定して頂いたという報が入ったり、今後の我々にとっては、大きなシンボルになる様な有難いお話もいくつか頂き、同行含めて動いておりました。

今までお金を掛けたくないどころか、掛けるべきではない、という位に位置付けられて来たオフィスに対して、漸く考えが変わって来て動き出している感じです。


先日は創業120年を経過した企業から先々のご相談を受け、まずは会社の事業、展開、そしてその源泉の理念、価値観などを会長さんからご案内とご説明を受けたのですが、正に不易流行をしっかり突き詰めると、素晴らしい継承と展開になっていくのを感じていました。

その翌日、毎年4月に開催される鬼澤さんの講演に、スタッフと参加して来ました。
"毎年言ってるよ!"と言われながら、できていない事だらけで冷や汗ものですが、今年はここでも、「貴方の会社は不易流行が明確ですか?」という言葉があり、自分の中には持ってはいるつもりが、自社にとっての不易と流行が、しっかり明示できていない事に気付きました。

「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」

これはその不易流行の基、松尾芭蕉が旅を重ねて持った概念だそうですが、”不変の真理を知らなければ基礎が確立せず、変化を知らなければ新たな進展がない”という事であり、しかしその根本は同じであるという事です。

人財含めた多様化、そしてその対応などの流行、しかしそれを生み出している、人やその繋がりを考える根本理念の不易を、再度明示して共有していきたいと思います。






2017年4月2日日曜日

言葉にすることができない 「暗黙知」


年度末の週が終わりました。

色々とお話しを頂いたりして慌ただしいですが、新人も含めて役割分担しながら、皆頑張ってくれています。

そのお蔭で私の方は、今週もIOTに関するシンポジウムにも参加していた東京出張含めて、未来に向けての時間に充てていました。

私自身はITリテラシーは低いのですが、やはりこの流れは掴んでおかないと、と思って参加しましたが、インパクトとしてはインターネットが解放された時よりは小さく思えるかもしれませんが、第四次産業革命と言われる様に、実際の社会において起こる事は、その時以上の大きな変化になる様に思います。

中スキルの仕事が無くなると言われたり、人工知能が人間を上回るという話が先行しがちですが、今まで以上にディープラーニングで得られたデーターをどの様に使うかなど、それを活用する”人”が重要になっていくと思います。

暗黙知というと、野中郁次郎氏が有名ですが、これを最初に唱えたのはハンガリーのマイケルポラニーという科学哲学者で、"人"は常に言葉にできることよりも多くを知ることがで
き、この、言葉で表現できない部分を暗黙知と提唱していたそうですが、”人”にしかできない暗黙知が、今後益々重要になってくる様に思うのです。

しかも、今暗黙知となっているものは、ディープラーニングによって瞬時に形式化されてしまうので、そういう意味でもポラニーが提唱した「言葉にすることができない知識」という解釈の暗黙知が、第四次産業革命以降の”人”が生きていけるポイントになると思います。

今週は京都流議定書の調整や打ち合わせなども行なっていましたが、今年10年目を迎える京都流議定書でもずっと追いかけてきたテーマは、「数値化されない価値」ですが、そんな価値観も漸く注目されて来た様に感じます。

ウエダ本社では、オフィスや働く環境において、その様な価値観を唱えてきたのですが、数値化、形式化できない為に、そんな価値観でオフィスや企業を展開して、どれだけ効果があるのか?もっと言えば、やはりオフィスはお金をかけるべきではないという考えに対して、どの様に数値化したエヴィデンスを出せるか?という事に苦労してきました。

しかしここに来て、そんな価値観をご理解頂いてお声がけ頂く案件も増えて来ており、かえって我々などは、言葉にすることができない暗黙知に拘っていっても良いのかな?という気にもなってきています。

月曜からは、新入社員や人員体制も新たになりますが、今月からはこの働き方や職場環境における暗黙知の探求を、更に進めていきたいと思います。