2016年4月30日土曜日

人工知能で理想的な組織、町を作る

今週も色々な会が有りましたが、その中で、経済同友会で聴いた日立製作所の矢野和男氏の”人工知能はビジネスをどう変えるか”というお話は、内容、構成、皆さんの満足度という面で、私が出た今までの例会の中でも屈指のものだった様に思います。

人工知能とビッグデーターの関係性、そこから生まれるビジネスとその変化、又、人間としての幸福観など、幅広いお話を、感性とロジックという事のみならず、膨大なデーターと実験研究を合わせてのお話でした。

最近話題になった囲碁対決は、人工知能が人間を破ったという話ではなく、AIを活用した素人集団が、経験豊かな専門家を破る時代が来たという様に読み取るべきであるというお話で、ビジネスやシステムは全てAI化していくという事でした。

更に私がもっと興味を持ったのは、サービスや知的労働の革新が起こるという事で、AIが人の幸福感や生産性を測り最大化できるというお話でした。

後者のお話はオフィスや職場環境において、人をモチベートする事、交差する場や動線、コミュニケーションなどを研究し、価値を生み出す事を目指しているウエダ本社としても追いかけてきたテーマであり、それを証明して頂いたかの様なお話しで、大変勇気づけられました。

膨大なビックデーターを瞬時に処理し、それを学んでいく人工知能は凄い!ですが、考えてみれば、人間の体はもっと凄く、脳は何も命令していないのに、毎日同じ体を作っています。
生物学者の福岡伸一氏の表現を借りれば、”細胞同士が折り合いを成す”という様に、人工脳どころか、脳の指示無しに折り合いを成して勝手に毎日生成されているのです。

私が理想とする組織や、働き方のイメージはズバリそういう事なのですが、本来、人間というか生物はその様なものなのだから、企業であれ、組織であれ、或は町であれ、そんな摂理にのっとったものが一番自然なのではないかと思います。

先週行っていたポートランドという町も、何故、心地よいのかというと、誰かが利益誘導の為に、お金を投じて作ったのではなく、細胞同士が折り合いを成した様な出来上がり方の町だからかもしれません。

そう考えると、全ての物が、分子や細胞が折り合いを成しながら体系立てている中で、一部の人間という生物だけが強欲に動いて歪めていっているのではないかと思います。

そんな中、人工知能というものは、一旦強欲さを取り去り、再度元の脳に戻す様な役割を果たしているのかもしれません。

矢野氏が講演の冒頭で、人工知能の紹介で使われた映像は、ロボットが鉄棒を行うのですが、初めは動きがバラバラで全く回れないのが、失敗のデーターを分析して、動きを修正し、1分もすれば見事に回り出すというものでしたが、いずれは、強欲に駆られてバランスを失った人間の心も分析して、自動的に修正する人工知能も生んで行って欲しいものです。

2016年4月24日日曜日

ポートランド レポート



今週は日曜日から米国のポートランドに行っておりました。

 
 数年前から、ソーシャルや町づくりなどで活動して  いる人達の間では最も注目されていた都市だけ  に、ずっと行きたかったのですが、今回、副委員長  を務めている京都経済同友会のイノベーションと  大学を考える委員会での視察があり、その役割と  いうよりは、是非行きたい!の一心で参加して来  ました。

 今や全米で最も住みたい町、しかも30代を中心に  若者が住みたい町と言われるポートランドも、以前  はかなり荒んでいて、危ない町だったそうです。

 何故そこから今の様な注目の町になったのか?を  聞いていると、切欠は食、それも地元の食材であ  ったそうです。

ニューヨークやロサンゼルスなどの地価が高騰して、都心では店を出せないシェフ達が、豊富な食材に目をつけ、それを生かしたレストランを作り出した事から、クラフトマンやアーティストなど同様の価値観を持つ人が集まり、魅力的な町へと変貌していったのだそうです。


ホールフーズマーケットという全米中心に展開すオーガニック中心のスーパーにも行って感激していると、何とポートランドではその先を行っており、ホールフーズでさえ、地元のニューシーズンズというスーパーに駆逐されていっているとの事でした。




ニューシーズンズでは、オーガ ニック、無添加に加えて、 半径何マイル以内かの地元から仕 入れるという事も徹底しているそうで、そんな店が支持されるという民度というのも素晴らしいと感じました。



独立系としては世界最大と言われるパウエルという本屋さんは日本のTサイトのレベルを遥かに凌ぐ規模でした。

こんな一つ一つが、多大な投資をしてハコモノを作ったというのではなく、むしろ逆で、中身から作っていったものが、ジワジワと広がり大きくなったというイメージで、この感覚こそ日本が吸収すべきものなのですが、まだ時間かかるでしょうかね。










                                            泊まりは、そんな流れの中心でもあるエースホテルでしたが、そこでは、ホテル利用者ではない人達が、電源を使用して、仕事やネットサーフを行っていました。

そんな場が価値を生むのですが、杓子定規に決まりや皆と同じを重んじる日本で、どこまで許せるか?がポイントでしょうね。


2016年4月16日土曜日

当事者意識を持つこと

一昨日熊本で大地震が発生し、これを書いている土曜日でも余震レベルではない大きな地震が続いており、予断を許さない状況です。

とても他人事にはなれない理由が二点あるのですが、それは、以前からブログもご覧頂いている方は知って頂いている通り、阪神淡路の大震災を、やはり震度7の神戸市でまともに被災した経験がある事と、今回前日まで福岡におり、新たに九州で活動されている沢山の方と繋がった事からです。

東日本大震災から5年、まだまだ問題山積である東北の方々と共に、また熊本で被災された方々にも、長期的な視点での支援が必要だと思います。

今週は、そのお呼び頂いた、福岡県中小企業家同友会ソーシャルビジネス委員会での事を書こうと思っていたのですが、少し内容を変えてみたいと思います。

今回のお話は元々、私が良いと思うリノベの方向、在り方で最も成功されているスペースRデザインhttp://www.space-r.net/ 𠮷原住宅代表の𠮷原さんからお誘い頂いたのですが、まだまだ本業とソーシャルビジネスを別物として捉える会社が多く、その辺りの関係性というか、ソーシャルビジネスに取り組む事が、自社に役立つ事なのだと思える切欠を作って欲しいとの、ハードルの高いリクエストでした(笑)

又、2週間程前に京都で、𠮷原さんと共に、イクボス推進事業などを手掛けられている委員長の小津さん、消滅都市と言われる大牟田市の町づくりを使命とされている冨山さんと打合せさせて頂いたのですが、皆さんの活動が素晴らしい中、それこそ、私自身が、気持ちの動きのまま行って来た展開しか話できないという事での講演でした。

愛知県の中小企業家同友会さんからも30代の経営者13名が来られており、前日の町歩きから、熱心に参加しておられました。

講演後の質問でも、その30代経営者のメンバーで、初対面でも好感度が持て、話しぶりからも、素晴らしい人物像と能力が伺える方でしたが、ソーシャルビジネスという事はやりたいが、何をやればいいか?率直に言って分らないというお話でした。

聞くとその方は四代目との事でしたので、”それだけ続くという事は、とても世間(社会)に背を向けてやって来られたとは思えないので、まずは自社の中に、それだけ続いて来られた強みがあり、そこには社会に対して役に立つ要素がある筈なので、そういう目で見直してみては?とお答えしたのですが、何となく、変な話ですが、この勉強会では、却って大きな可能性を感じました。

よく話題にしていますが、昨今のソーシャル~というものには、かなり表面的、トレンド的なものが多く、何か違和感を持っていたのですが、真面目にしっかりと事業を続けて来られた会社が、そこにある社会に向けての価値を見出す事が、地に足ついた形で、実際、今後の日本を良くしていく可能性があると感じたからです。

ソーシャルビジネスというと、本業は本業として、それ以外に、わざわざ新規で、社会にとって良い事を作っていかなくてはいけない様に思われるのですが、そうではなく、そもそも社会に役立つ為に事業があり、それを永続させていこうとすると、自社だけが良いという選択肢は出てこないので、社会(世間)にとって良い存在が生まれる筈なのです。

𠮷原さんのリノベーションが好きなのは、決して、作り手の自己満足や押しつけではなく、そこに在る小さい種が自然増殖的に広がっていく感じであり、その土壌作りを行っておられるという事で、これからの日本においては、これしかないという価値創造の有りかただからです。

東京⇔地方、中央集権⇔地方自治、指示命令⇔自主・自立、大企業⇔中小企業、
標準化・均一性⇔多様性、作り手(メーカー)⇔利用者(消費者)などなど、全て同じ構図です。

私は左側が悪いと言っているのではありません。
以前の様に左側で通用する事が限られているのに、その頭で考えるのが間違いだと思うのです。

これからは右側の価値観で動かしていかないと立ち行かなくなりますし、その為には自分事と捉えていく人を増やしていかなくてはなりません。

我々は、地震や災害なんて自分には降りかからないと勝手に思っています。
何の確証もないのに。

そして悲しいかな、遠くの災難は他人事になってしまいます。

今回の地震も日本だから大騒ぎしますが、遠くの外国だと、一瞬のニュースで終わります。

その国内でも、距離が近かったり、関係性が近い人は心配しますが、その距離が遠いと、他人事になってしまいます。

私も偉そうな事は言えません。

たまたま、被災経験があり、今回も前日に九州に居たから、距離が近いだけなのですが、こんな困った事、大変な人が居るという社会課題に対して、少しでも自分事と思える様にする事、それを事業でも意識する事、それこそが、本質的なソーシャルビジネスだと思います。

一日も早い復興をお祈りしますという締めは綺麗ですが、それをよりも、多くの人が当事者意識を持って長期的に意識を持っていく事、そんなソーシャルキャピタルを増やしていきたいものです。


2016年4月9日土曜日

ソーシャルビジネスって何でしょう?

今週は色々と嬉しい事がありました。

ウエダ本社で開催して頂いている、大久保寛司さんの連続講座「いい会社実践塾」で、元タカラジェンヌの妃乃あんじさんがゲストで来られ、再会も嬉しかったのですが、約8か月の間の進化ぶりと、私も知らなかった彼女の強い思いが伝わる様に構成されていて、大きな広がりを感じて感激しました。

あんじさんは昨年の6月頃、ある方から紹介されたのですが、少しのお話の中でも、宝塚を退団し、東北の子供たちの支援を、自分の貯金を崩してまで継続して行なわれている話を聞き、何とかできないものか?と考えていました。

とは言え、この活動を助けるには、まず構成をしっかりして広める事が重要だと思い、大久保さんに紹介する為にも、京都流議定書で司会として来て頂いたのですが、その後はいつものごとく大久保さんが日本郵政を始め、糸井重里さんにまで紹介され、みるみる活躍をしていかれたのでした。

今回、そんな話を初めて直接聞かせてもらう事ができ、そこまでやっていたのかあ、と感心させられる反面、浅くしか見れてなかった事に、反省もさせられました。

大久保さんからも、最近ではイノベーター達の紹介屋の様な存在と言われるのですが、いい活動をしていれば誰彼となく紹介しているわけではなく、思いがピュアで、腹を据えて取り掛かっている人で、伝え方を分り易くできれば、多くの人を巻き込んでいく魅力のある人というフィルターにはかけていて、京都流議定書がそんな人達の飛躍の場となっている事は一番嬉しい事です。

今週は、門川市長の所に、今年の京都流議定書のご説明に伺ってきました。

第一回からずっとご出演頂いているだけでなく、ゲストなども一緒に考え、時には自らお誘い頂いた事もある程、思い入れも持って頂いているのですが、今年で九年継続している事で、これも有難い事に、今の京都市のソーシャルビジネスへの流れを作ったとまでご評価頂いています。

金曜日には、副委員長を務めている経済同友会のイノベーションと大学を考える委員会が、龍谷大学で行なわれるのも素晴らしいですが、NPOセンターや、地域創造基金を立ち上げて来られた深尾さんに経済同友会で話してもらうのも、なかなか良い交差感だと思いました。
日本においてのNPO活動の発展を支えて来られた深尾さんからは、地域でお金を回していくローカルファイナンスについて伺いましたが、ソーシャルビジネスと言わずとも、地域で根付く会社、長く継続する会社をしっかりさせていく事の重要性を再認識しました。

先週入社した新人たちは今週は研修でした。
うちの研修は、社員達で作り社員達が講師となるものですが、それ以外に、これまた今週京都で開催されていた鬼澤さんの講演にも参加させました。

何故、独自性が必要か? 

変えるべき事と変えない事 

経営理念、戦略、成果の繋がりなど、

対話を交えて分り易くお話頂きました。

ここ数年、マイケルポーターがCSV(共通価値の創造)として、本業に即した形で社会的課題を解決する取り組みを行っていくべきと提唱した事が新しい指針の様にも言われていますが、今週もこれだけ周りで、色々な事が起こり、ありがたい評価も頂く中で、ウエダ本社としてもわざわざCSV、ソーシャルビジネスなどという学問の様な話ではなく、ローカル(地域)と人に役立つ存在になりたいと感じましたし、あとはパーツを繋いでいくだけなのですが。

そう言いつつも来週は福岡で、ソーシャルビジネスのテーマで講演させて頂くのですが、偉そうに講演というより、皆さんともお話し、考えを整理してきたいと思います。

2016年4月2日土曜日

フィロソフィーを分解すると

今週は一般的には年度末と新年度という週で最盛期でしたが、スタッフはフル回転でやってくれ、現場も内務も大きな事故、問題もなく年度末を終える事ができました。

長年の課題である、個々の動きを組織力にするという事においては、初めてと言っても過言ではなく、絡み合う気配が出てきました。

現場も仕事を割り振り、チームでカバーしていたのと、内務では一番のベテランが長期に休む中、まだ不慣れな業務も、残りのメンバーで見事に乗り切ってくれました。

皆が忙しく、相手してもらえない私は、かえって来客の時間や、会合に参加する事ができ、今週も又、有り難い出会いもありました。

そんな中でも、今までに何度かしかお目に掛かっていない方が、ブログやFBをしっかり見て頂いていたり、共感するからとわざわざお越し頂く事もありました。

4月1日には4人の新入社員が入社しました。

高卒の新入社員の話は何度か書いてもいましたが、大卒の新入社員も有り難い存在で、彼は募集もしていない中、ウエダ本社に入りたいと、リリースなどを手掛けられた大室先生(京都ソーシャルビジネス研究所長)に数か月に渡って相談に行き、入社してきてくれたのです。

この数年、うちの会社では採用できる人数も少ないので、全く募集はせず、価値観を知って頂いている先生からの紹介や、希望してくれる学生を採用しているのですが、この大手志向で、中小企業が採用に苦労する時代に、大変有り難い話ですが、これも共感、信頼が、大きな価値になっているのだと思います。

企業風土を変えたい、オフィスを変えたい、というお客様が逆指名でお声掛け頂くケースも出てきていますが、これも我々の考え方に賛同してもらっている事がビジネスにも繋がってきている現れです。

ある意味、中小企業は数を追いかける必要がないので、周りに左右されず、自分の所の価値を発信していく事こそが、実は一番の攻めでもあり防御になると思います。

という事で、入社式後から始まる新入社員の研修の最初は私が担当して、ウエダ本社の理念からスタートします。

それもお題目の様な理念ではなく、何の為に生きるのでしょう?という所から、ウエダ本社としての基本理念~経営理念~経営指針~行動指針、そして、ウエダの指針から前文のついたウエダベーシック10の構成を説明するのです。

また、そんな哲学、理念という事ばかり言っていると、重い話ばかりと言われるかもしれませんが、やっぱり強い会社は、それがどれだけ継承されるかだと思います。

今週、昨年亡くなられた堀場最高顧問にご指導頂いていたクオリアの会があり、今後どうするかにおいて、ご子息である堀場厚社長にお越し頂きました。

以前から私は、これだけ見事に、親子間で事業継承、それも、それぞれのキャラクターを生かし、息子さんが新たな展開で発展をされながら、社是の”おもしろおかしく”という独特の風土が継承されているケースは日本全国でも稀有な存在だと思っていますが、創業者が亡くなり、規模もドンドン大きくなる中で、理念がどこまで継承され、良い意味で、家族的、中小企業的風土で展開できるのかは、興味ある所です。


哲学=フィロソフィーとは、phiro=”愛する” sophia=”知識” というギリシャ語から来ているらしいのですが、堀場社長のお話を聞いていても、素晴らしいと思う会社は、人(ステークホルダー全て)を”愛し”、人の可能性を信じる事に”知識”を向けている様に感じます。

おかしくなっていっている大企業は、数字を”愛して”、それを最大化する”知識”にばかり目を向けていたのではないでしょうか?

我々としても、今週入ってくれた新入社員も含めて、本来の意味のphilosophyを皆で共有していきたいと思います。