2014年8月31日日曜日

存在価値への欲求

先日、尊敬するアミタホールディングスの熊野会長と久しぶりに、二人でじっくりお話させて頂きました。

私が熊野会長を尊敬するところは大きく二点で、一点は、環境という領域でビジネスなどが無かった30年以上も前から、「自然資本と人間関係性資本が増幅する持続可能な社会」を目指して、それこそビジネスとして持続可能なスタイルを確立し上場まで果たされたという、強烈な思いとその実行力、そして二点目は、私も偉大な経営者を数々知っているつもりですが、感性も持たれた上で、これ程、ボキャブラリー豊富で論理的に話ができる方はおられないと思うところです。

自然資本と、人間関係資本が増幅する持続可能な社会・・難しいでしょ?

でもこれを30年以上前から追いかけ、環境という領域で上場までされて、その上場益をつぎ込んで信頼資本財団という財団を作り、3・11後は、この自然資本と・・という事に定款変更をし、その実現には京都しかないと、本社まで京都に移されたという様に、想いを実現して来られたのです。

大変有り難い事に、そんな熊野会長から、共感性が有るとの事から、信頼資本財団さんの事務所を当社に置いて頂いている事もあり、お話もさせて頂く機会も多いのですが、会長とお話すると、もやっとしている事が、答えていく内に分析され整理され、見える形になるのです。

先日も私が自分自身でも感じている、人付き合いにおいての二面性について話していました。

私自身、不思議でもあり、私の事を良く知っている人からも不思議がられるのですが、経営者の集まりなどで仲良く?二次会、三次会へ流れていくという事を殆どしないですし、基本的に群れて行動するのはあまり好きではないのに、方や、幅広い人脈だとか、交流と言われる様に、”人”自体には大変興味があり、多様な人と関わりたい自分、何処にでも参加していく自分が居るのです。

又、相手の地位やビジネス上の実績だけでは全然凄いと思わない尊大な自分と、若い人の事をよく面倒みているね・・などと言われますが、トンでもない話で、若い人の事、まだ実績もない人達の事を本当に尊敬している、良く言えば、謙虚な自分も居ます。

そんな話をしていると会長から、”岡村さんは、存在価値への欲求が強く、その価値追求をしているんだね?”と言われて、目から鱗でした。

だから、多くの人がすり寄ったりする立派な成績を収めている経営者や、幾ら、面白い、凄いと周りが言っていても、存在意義を持っている様に感じない人には、ハッキリ言って尊敬できず、反対に、年齢、性別などは勿論、実績や、賢さ、説明の上手さなど全く関係なく、存在価値に向かって生きている人、行動している人には、大変興味を持ち、素直に尊敬しているのだという事が腹落ちしたのでした。

そうか、だから学生含めて、周りの若い人の話はよく聞くのに、自分の所の社員には、もっと生きる事に価値を見出してほしいと厳しくなってしまうのも、そのせいだったのか?、と変に納得しました(笑)

生きる事や、存在価値に欲求が強い人を尊敬するのと共に、存在だけで役に立っているのだという視点を併せ持って、もっと、皆にも優しくなりたいと思います(笑)

2014年8月24日日曜日

日本型コミットメント

今朝まで北海道におりました。

参加させて頂いているトップフォーラムが帯広であり、カルビーの伊藤社長の講演とカルビーさんの契約農家の視察&イモ掘りという勉強会でしたので、イモ掘りには子供も便乗させて頂きました。

実は、お盆休みを取っていませんでしたので、家族も帯同し、休暇に変えて、勉強会の前後一日を北海道で過ごさせて頂きました。

と言っても、行き帰りのチケットがうまく取れず、千歳に入ってレンタカーでの行き来でしたので、殆ど移動で運転手状態でしたが。


この会には元々、カルビー創業家の松尾相談役もメンバーであり、又、その松尾相談役が上場を託してヘッドハンティングされた松本現会長も名前は連ねておられる事から、この様な特別勉強会を行って頂けたのですが、カルビーさんは、働き方の変革を唱えている我々にとっても、日本企業の良さを残しながら、グローバル企業に変貌していかれる姿を、間近で見せて頂くことができる、この上ない存在です。

30年以上も前から、農家と専属契約をするという事は、その時代には全く考えもつかない事で、量的な安定と、農業や、農家に対しての考え方を抜本的に変えないとできない事であったと思います。
単に自社だけの目先の利益を考えるのではなく、農家と共に道を切り拓いていく姿勢でないと無理であったと思いますし、その事は、実際訪れた農家でも、80歳のお爺さん、50代の息子さん、20代のお孫さんの三世代が一緒にイキイキと働かれる姿や、カルビーの方との距離感からも見て取る事ができました。

個人の成長が会社の成長に繋がるとのスタンスもしっかり持っておられますが、同時に、コミットメントを求められ、二年連続でコミットメントが守られなければ降格という事も明確にルール化されている様でした。

この辺りは、our credo が有名なジョンソン&ジョンソンの日本支社長であった松本会長のバランスからくるものだと思いますが、未上場時代の優しいけれど、悪く言えば甘い(と言っても一般レベルからいけば素晴らしい業績です) 会社から、世界の食品会社と戦える会社に変貌させていこうとしておられるところなのだと思います。

それだけに、外資系のコミットメントや、単に、売上、利益の結果だけを出せば良いという成果主義とは似て非なるものだと思いますし、実際この点については、カラオケの歌声が流れる二次会の席で、伊藤社長に、じっくり確認させて頂きました(笑)

松本会長が強烈なリーダーシップでビシビシ展開されておられるイメージでしたが、実際は、年初にじっくり二人で摺り合わせをされ、あとは殆ど打合せらしきものをしないと言われる伊藤社長ご自身も、会議は基本的に無しで、下への権限移譲の連鎖を作っておられます。

その自主性を重んじるところと、その一方での理念、価値観の摺り合わせ、又、食品会社としてのリスク管理やコンプライアンス上の管理や仕組みという、それぞれがトレードオフの関係になる様な要素をバランスさせるという事が、今後の日本企業の本当の意味でのグローバル化なのだと思います。

そして、世界を含めた外部環境下での松本会長の展開と、創業からの良き時代を知り、言わば日本的成果主義の在り方を構築していかれているのが伊藤社長、という素晴らしい掛け合わせなのだと感じました。

世界で注目された日本の家電メーカーが創業家の理念継承をうまくできず苦しんでいるだけに、カルビーさんの今後の展開は日本全体としても大いに注目すべきだと思います。


自主性(自由)と厳しさ(責任)のバランスは、以前、東京本社のオフィスも見学させて頂いた際にも、見事にそのメッセージが表されている様に感じましたし、表面上、優しいところ(効率的にみれば甘いところ)だけ、真似しかけていて、信じて頂けないかもしれませんが(笑)、私自身の存在感をドンドン消していこうとしているウエダ本社でも、新年度から、放任ではない、個人の分権を進め、日本型のコミットメントを研究していきたいと思います。



2014年8月17日日曜日

それぞれのバランスシート

企業の評価にはバランスシート(貸借対照表)というものがありますが、この考え方って、結構いいと思います。

バランスシートとは資本の調達先と運用を表すものですが、それだけに資産と負債がイコールで表され、最終というのか、左右それぞれの合計は同じになります。
ただ、当然、その中身がそれぞれ違って、それぞれの考え方がある筈なのに、効率などの一面的な評価を気にし過ぎているのではないか?と感じます。

勿論、上場企業や、他人資本が多い場合は、勝手にはできないですし、経営者として会社価値を最大化を目指すというのは当然であるという前提なのですが、それを分かりつつの問題提起として、特に未上場企業で、借入金なども少なく、株主も身内が多い中小企業などの場合は、もっと自社の考えを表していけば良いと思います。

ウエダ本社は今月が決算です。

前の期から、決算の業績見通しにおいて決算賞与を出す様にしているのですが、今年度は社員達で決めた目標も下回っており、ハッキリ言って決算賞与を出す業績ではありません。

ただ、売上、利益の損益計算書上では良い業績ではありませんが、組織として、又、皆の意識としては確実に成長をしており、しかも赤字ではないので、些少ではありますが、出すことにしています。

我々の様に未上場で、現在実質的には無借金の会社で、しかも、ステークホルダーの優先順位において、社員を一番に掲げているのですから、売上、利益という表面上の成績だけを捉えて、決算賞与は無しという決定はおかしいと思います。

大変レベルの低い経営をしておきながら甘い!と言われると思いますが、少なくとも未上場企業においては、ROEなどで効率を考えるのではなく、バランスシートに意思を持っていくべきだと思いますし、一面的な外部評価からの呪縛から逃れるべきだと思います。

人の成長も勿論ですが、その、人が集合した組織なのですから、成長というものも色々な見方があると思います。

この投資を実行すれば、昨年よりも最終成績は落ちるが、企業や組織の成長としては実行すべきなら、そして、その方向を目指す企業なら、実行していくべきだと思うのです。


メタボ評価ではないですが、ウエスト85センチ以上がメタボで、84.9センチ以下だとセーフ
という基準、指標ができると、それが独り歩きしていき、その数値だけで企業や、人の評価が決まっていく事が多いですが、もっと多面的な評価ができないものか?と思います。

ちょっと意味は違いますが、長所の裏は短所であり、同じ事が見方を変えればどちらにもなります。
又、良いという事、例えば今、お金的に成功している事が、実は、人間的には驕りや傲慢さを生んでマイナスであったり、幸福と不幸はそれぞれ本来はバランスされていて、それは他人と比べるものではなく、個人個人のバランスシートで考えればいいのだと思うのです。

大金持ちで資産は大きいですが、その反対側の負債となるべき事は必ずあるものです。
逆に、自分は不幸ばかり、という人は、それが糧となる経験という資産を得ているのだと思いますし、逆境を跳ね除けて、常人ではできない価値を生み出しておられる人も沢山おられます。

自分自身をそれこそ棚卸し、自分自身のバランスシートを考えてみるのもいいのではないでしょうか?

2014年8月9日土曜日

信頼は資本になるのです。

ウエダ本社の北ビルには信頼資本財団の事務局が入って頂いています。

信頼資本財団というのは、"信頼"が"資本"となって回っていく世の中にしないといけないという、アミタホールディングスの熊野会長が、上場益をつぎ込んで作られた財団ですが、私もこの、"信頼"が"資本"となって回る世の中に、という考え方には全く共鳴しており、我々はそれを企業や職場へ展開したいと、ご指導も仰ぎながらご一緒もさせて頂いております。

こちらもご指導も頂きながら、目指すべき企業姿勢のTOPとも言える伊那食品工業さんの社是、いい会社を作りましょう、そして塚越会長の年輪経営は、企業のあるべき姿を最も表していると思います。

又、その社是を真似て、いい会社を増やしましょうとされた鎌倉投信さんは、金融の世界で、お金の力を、いい企業をサポートする意志に変えていく事を目指しておられます。

働き方の変革、あちこちで議論されたり、標榜している会社もたくさん出てきましたが、いつももどかしい感じを受けます。

何故か?
当たり前ですが、それは手法やスキルの話ではなく、私の中で結論は明確になっているからです。

私の中でと言いましたが、私だけではないし、私などまだまだで、明確に分かっておられる会社、人も沢山おられるのですが、残念ながら日本全体においてはマイノリティーなのです。

これを何とか変えていきたい、これが私の想いでもあり、ウエダ本社の展開なのです。

うちの会社がリノベーションに乗り出したのも、KYOCAというビルを手掛けるのも、こういう力を結集すると、従来では無かった価値を生むという事を目に見える形にしたいからなのですが、
そんな中、先日大変嬉しい事がありました。

そのKYOCAというビルで、まだまだ課題だらけの所から、信頼や繋がりで価値創造をしていきたいからと、今後新たに関わる関係者は、私達のこの考えが分かる人、会社を集めていきたいとワガママを言わせて頂き、新たに決めるタイミングであったビルメンテナンスの会社を、その価値観に合った所を採用して頂きました。

それまでに暫定的に入って頂いていた会社さんが悪かったわけではなく、むしろお断りする際の電話でも、社長さんの対応などは素晴らしいものでした。

それでも、推薦させて頂いたワタナベ美装さんという会社は、実は一緒に仕事はした事はありませんでした。
元々は、何処かで私が講演した際にお越し頂き、その後、うちの考え、取り組みにも共鳴して頂き、セミナーや研修などに積極的に参加して頂いていました。
勿論、うちの話などに敏感に反応される会社さんですから、自社での取り組みや社員さんへの想いは、完全に負けているなあと思っている素晴らしい会社さんでした。

その会社さんに入って頂いて10日程経過した頃、うちの担当者がテナントに入って頂いている女性スタッフの方から、「清掃が素晴らしくなりました、対応して頂いてありがとうございました」とお礼を言われて驚いて帰ってきたのです。

「たかが掃除と言うなかれ」という本もありましたが、同じ様な清掃業務で、しかも私も見る限り、前の会社さんも悪くなかったのに、どこでそんなに違いが出るのか驚きですが、同時に、信頼が価値を生む事をまざまざと見れて大変嬉しく思ったのでした。

そして少しづつKYOCAには、そんな想いを持った人、信頼という資本を持ち、それを生かしていける人が集まり出しています。

いずれは、お金や条件だけを目指す人、利己的な考えだけを持った人が引っかかるゲートでも設けようかな。

2014年8月2日土曜日

オーケストラの様な組織

先月末で育休を取得していた女性社員が退職しました。
予定では9月から復帰する事になっていたのですが、育児に専念したいとの事でした。

ウエダ本社の風土改革においては貢献してくれた社員だけに、残念ではありますが、双子で、しかも産まれた際、ちょっと心配な時期もあったのですから、ある程度、予測もしていました。

この会社でなかったら、こんなわがままは聞いてもらえなかった、と言ってくれていましたが、結婚前にも辞めるという話があり、もうちょっと経験を積んだ方がいいんじゃない?とのアドバイスから、思い直して残ることとなり、その後結婚し、妊娠した際に退職依頼してきたものの、双子と分かると生活の事を考えて一転、産休、育休を取って残りたいと変遷してきたのでした。
それで9月から復帰するという事になっていたのですが、やはり育児に、、と、反転したのでした。

一方で、元々は産休の間の契約で募集したつもりが、新卒で意欲の高い学生が来てくれたので、結果的にそれも二人を、正社員で採用していたので、復帰してもらった場合も、双子のママで通勤にも1時間半程かかる、かなり制限された中、どの様に役割を持ってもらうか、どの様な仕事を作っていくか?まだ明確には描けていませんでした。

選択と集中を基本と考える様な効率経営からすれば、私の行なっている事はナンセンスだと思います。

こちらで集中して、そこに人を割り振るのではなく、その人が何をやりたいか?から仕事をつくり、居る人からどの様に構成するかを考えるのですから。

彼女が担当していた印刷という仕事も、彼女がやりたかったり、彼女がいずれ実家の仕事を手伝える事も考えて作っていっただけであって、やる人が居なければ、社内でやる必要もないとも思っています。

当社は、日本人の働き方を変革していく事を目指していきますので、会社側の立場に立てば見えていない事を、人にSPOTを当て、反対からの発想で考えていこうと思います。

会社とは、個人が自分や家族の人生をかけてそこに多大な時間も費やしていくのですから、そこにかける人達のやりたい事、やれる事を発揮できる場を用意すべきだと思いますし、個人のやりたい事ややれる事と会社の方向性、使命とを擦り合わせていく事が経営者の仕事だし腕の見せ所だと思います。

結果が出ていない中、私が言っても信憑性がないですが、TOPダウンで全て決め、システムに落とし込み、マニュアルを作ってそれに従わせて管理して結果を出すって、ある意味楽じゃないのかと思うのと、いくら高い給料を払っているからと言って、他人の人生を拘束している様な気がしてなりません。

会社の使命、存在意義を決め、価値観を唱えるのは経営者ですが、そこに集まった人達は、自分のやりたい事や、得意な事をそれぞれ、自らが自らの意思で行なっていくものだと思うのです。

経営というものは、人智を尽くして、最高のアートかイベントの傑作を創ることの様にも感じるのですが、いつか、人智を結集したオーケストラの様な組織の指揮をとってみたいものです。